三角筋の作用や構造、そして特徴から鍛え方までを見ていきます。筋トレにおすすめなトレーニング方法からストレッチ方法の具体例もあるので、そちらも確認してみましょう。
三角筋と言えば、一度は耳にしたことがあるかもしれない、それなりにメジャーで有名な筋肉の一つ。
肩の筋肉として多くの人がイメージする筋肉であり、上半身の多くの動作に関与している、とても重要な筋肉です。
その三角筋について、構造から作用、他にも知っておきたいちょっとした特徴や鍛え方、さらに筋トレに取り入れたい、おすすめなトレーニング方法やストレッチ方法までを紹介していきます。
三角筋について詳しく知りたくなったら確認必須です!
- 三角筋(さんかくきん)とは?
- 三角筋の知っ得情報
- 三角筋の鍛え方としておすすめなトレーニング方法
- 三角筋のストレッチ
- 三角筋とは?【鍛え方・作用・構造まで】筋トレのトレーニング方法からストレッチ方法具体例付き!まとめ
三角筋(さんかくきん)とは?
三角筋とは、肩を覆うようにして表層に位置する筋肉。
上腕外側上方の盛り上がり部分からが三角筋となるため、肩甲骨と上腕骨をつなぐ肩甲上腕関節(いわゆる肩関節)だけでなく、上腕骨の上部までを覆っている大きな筋肉です。
「肩の筋肉」と言う場合、一般的にはこの三角筋を指し示すことがほとんどです。
三角筋は一つの筋肉ではあるものの、起始が異なる鎖骨部(さこつぶ:※前部)、肩峰部(けんぽうぶ:※中部)、肩甲棘部(けんこうきょくぶ:※後部)の3つに分けることができ、それぞれの働きが異なり、同時に複数の役割を持っているのが最大の特徴。
その結果、肩関節のほぼ全ての動きに関与していくことになる、とても重要な筋肉です。
その三角筋のそれぞれの部位が持つ、最も重要な働きを一つずつ挙げるとすると、前部は脇に下ろした腕を真っ直ぐ前方に挙げる「肩関節屈曲の主力筋(注1)」として、中部は腕を体の側方に開く「肩関節外転の主力筋」として、そして後部は肩から腕を後方に振る「肩関節伸展の主働筋(注2)の一つ」として働いています(※それぞれの部位は上記の働き以外にも、複数の肩関節動作に関わっている。詳細は後述)。
ちなみに三角筋は、英語で”deltoid”と表記され、ギリシャ語で「三角形」を意味する”deltaΔ”から派生した言葉。
三角筋全体を広げると二等辺三角形になるため、そのような名前が名付けられました。
- 注釈1:主働筋とは対象となる関節動作に対して中心となって働く筋肉群
- 注釈2:主力筋とは主働筋の中でも特に中心となって働く筋肉
三角筋の役割
① 鎖骨部(前部)
肩関節の屈曲
- 脇に下ろした腕をまっすぐ前方に上げる
肩関節の水平内転
- 水平面で腕を後方から前方へ動かす
肩関節の内旋
- 上腕を回転軸にして、肩を内向きに回す
② 肩峰部(中部)
肩関節の外転
- 腕を横に開く
③ 肩甲棘部(後部)
肩関節の伸展
- 前方にあげた腕を真っ直ぐ後ろに引く。脇に下ろした腕を真っ直ぐ後方に上げる
肩関節の水平外転
- 水平面で腕を後方から前方へ動かす
肩関節の外旋
- 上腕を回転軸にして、肩を外向きに回す
三角筋の機能と役割(作用)例
三角筋の作用は上で紹介した通り、部位ごとに様々であり、その作用が関与する場面は多岐に渡ることが分かります。
この三角筋の作用が、日常生活やスポーツで具体的にどのような場面で影響するのか、いくつか例を見ていきましょう。
日常生活において
- 腕を当ててドアを押し開ける(前部)
- ドアを腕で引っ張って開ける(後部)
- 横にあるものを取るために、腕を横(側方)に持ち上げていく(中部)
スポーツや運動において
- テニスのバックハンド(中部)
- ランニング中に腕を大きく前後に振る(前部・後部)
- 柔道で相手を引き寄せる(後部)
- 相撲で腕を伸ばして相手を前方へ押す(前部)
- バーベルを頭上に持ち上げる(前部・中部)
三角筋に関しては、働きが異なる3つの部位に分けることが出来る肩を覆う大きな筋肉として覚えておきましょう。
三角筋のまとめ
筋肉データ | 三角筋筋のまとめ |
---|---|
筋群 | 肩関節外転筋 |
支配神経 | 腋窩神経(C5~C6) |
起始 | 鎖骨部(前部):鎖骨の外側1/3の前縁 / 肩峰部(中部):肩甲骨の肩峰 / 肩甲棘部(後部):肩甲骨の肩甲棘の下縁 |
停止 | 上腕骨の三角筋粗面 |
筋体積 | 792㎤ |
PCSA(注1) | 82.0㎤ |
筋線維長 | 9.7cm |
速筋:遅筋 (%) | 42.9:57.1 |
(注1)「生理学的筋横断面積」の略称。基本的に筋肉が発揮できる力はPCSAに比例する | |
【参照:プロが教える 筋肉のしくみ・はたらきパーフェクト事典】 |
三角筋の知っ得情報
実は上半身の中で最も大きい筋肉
「上半身の筋肉の中で最も大きな筋肉とは?」と聞かれた場合、おそらく「胸の大胸筋」や「背中の広背筋」という答えが多そう。
たしかに、この二つはその面積がとても広いため、外から見た場合、直感的にどちらかが最も大きな上半身の筋肉であると思ってしまいがち。
しかし実は、肩の三角筋こそが、上半身の中で最も大きな筋肉だったり。
三角筋を含めた、主だった上半身の筋肉をその体積順に並べると次のように確認出来ます。
- 三角筋(792㎤)
- 大胸筋(676㎤)
- ローテーターカフ(注3)(672㎤)
- 上腕三頭筋(620㎤)
- 広背筋(550㎤)
- 僧帽筋(458㎤)
(注3)ローテーターカフ(回旋筋腱板)は、実際には4つの筋肉からなる複合筋なため、他の筋肉のように単一ではない。単一の筋肉だけを比較した場合はこのランキングには載らない。
このように、体積を確認すると、実は三角筋が最も上半身の中で大きいことがハッキリと分かります。
ちなみに三角筋は直感的にあまり大きくないという印象が強いためか、情報発信源によっては「小筋群」に分類されていることがあります。
しかし、筋生理学・身体運動学の権威である谷本道哉教授も指摘するように、この分類は、三角筋の持つサイズから考えると正しくはなく、上半身の中で最も大きい三角筋は、本来であれば「大筋群」とすべき筋肉です(参照:筋トレまるわかり大事典, p.72)。
男性は顕著に発達し女性は発達しにくい三角筋
「広い肩幅」や「逞しい大きな肩」など、大きく成長した肩周りというのは、男性の強さや逞しさの象徴とされることがありますが、これには明確な理由があったり。
というのも、肩周りを構成する最大の筋肉である三角筋の発達具合というのは、男性と女性の間で顕著に変わってくるから。
実は男性の場合、三角筋も含まれる肩から腕にかけての部分(僧帽筋や上腕筋群も含まれる)には、男性ホルモンの受容体(特定の刺激を受け取り利用できるように変換する仕組み)が、女性に比べてとても多い。
その結果、思春期前の子供は、男女ともにそこまで三角筋の大きさに関して違いは見られないものの、思春期を迎えた頃から、そのサイズに大きな差異が目立ってくるようになる。
また、同じ筋トレをした場合でも、その発達具合が顕著に異なってくることになります。
このことから、人体の中でも特に肩から腕にかけての部分というのは、性の違いを反映する、特徴的な部位と言え、その一部を担う三角筋は、男女の違いがハッキリと出る筋肉になるのです。
女性はマッチョになり辛い
ちなみに、このことから言えるのが、女性は筋トレを行っても、基本的には男性並みのマッチョになることはまずないため、マッチョになりたくない女性も心配無用であるということ。(※ボディビルを目指して超高重量でトレーニングを行い、栄養管理などを徹底することでようやく少しマッチョになる程度)
したがって、マッチョになりたくない女性だから、軽い負荷で筋トレをやるというのは、そもそもほとんど意味がなく、女性であってもしっかりと筋肉に刺激が入る負荷でトレーニングを行い、成長しにくい筋肉を少しでも増強して筋肉を引き締めていくことが大切。
大きな負荷を利用してしっかりと筋トレをすることで、女性であっても筋肉量をある程度は増やせ、基礎代謝を向上させることにつながってくるため、結果として安静状態でも太りにくい健康的な体を作っていくことが出来ます。
(参照:運動に関わる筋肉のしくみ)
三角筋はボディメイクに超大切
また、三角筋はボディメイクの観点で考えた場合に、とても大切な筋肉の一つであるとも言えたり。
上で触れたように、三角筋が持つ男性らしさの象徴という側面を考えた場合、男性らしさを強調してかっこいい体を手に入れたいと考えている男性にとっては、この三角筋をしっかりと鍛えて大きくしておくことが大切。
前から見ても横から見ても、そして後方から見ても、ボールのように丸く大きく発達して大きさが分かる三角筋は、かっこいい肉体の重要な要素。
特に、肩幅が広がり、逆三角形の背中を手に入れようとした場合、背中の広背筋だけを鍛えるのではなく、この三角筋の特に中部を鍛えて、トップの幅を広げておくことが大切。
また、このことは男性だけではなく女性にとっても、小顔に見える上半身を手に入れたい場合などには知っておいて損はないこと。
三角筋の中部を鍛えて肩に幅を出しておくことで、顔幅との差が大きくなり、小顔の印象を生み出していくことが出来ます。
三角筋を鍛える場合に知っておきたいこと
三角筋を鍛える場合、基本的には「押す力」と「引く力」のそれぞれに関わる、他の複数の筋肉と同時に鍛えていくというのが、バランスも効率も良いため基本的にはおすすめ。
というのも、ほとんどの上半身の動作には、三角筋のどれか一部が必ずと言って良いほど関わってくるため、三角筋の前部・中部・後部を同じ日に全て鍛えると、次の日に他の上半身の筋肉を鍛えた場合、どうしても三角筋の一部が連日疲労し、三角筋にとってはオーバートレーニングになってしまうことがある。
結果として、三角筋全体を高負荷で一度に鍛えると、翌日は必ずと言って良いほど上半身の筋トレを避ける必要があり、筋トレのスケジュールを組む上で非効率になりがち。
そのため、よっぽど肩を集中して鍛えたいというフェーズでない限り、基本的には、
押す動作
- 大胸筋や上腕三頭筋と一緒に三角筋前部を鍛える
- 頭上へ腕を押し上げる動作(肩関節外転が含まれる)で、上腕三頭筋と三角筋の前部・中部を鍛える
引く動作
- 広背筋や大円筋と一緒に三角筋の後部を鍛える
といった具合に分け、他の関節動作に関与する筋肉も一緒に鍛えられる、コンパウンド種目を中心に取り入れていくのがベター。
その中で必要であれば、押す動作を鍛える日に、三角筋の前部を集中して鍛えるフロントレイズや、三角筋の中部を集中して鍛えるラテラルレイズを取り入れ、引く動作を鍛える日に、三角筋の後部に負荷を集中させやすいリアレイズなどを行っていくようにすると効率的です。
肩の強化に集中するために1日で全てを鍛えるなら次の手順がおすすめ
ただ、中には他の部位より肩を集中的に強化していきたいという目的のため、「肩の日」を設定し、三角筋全体を1日で鍛えるといった場合もあるはず。
その際は、次の手順で鍛えていくと、三角筋を満遍なく効率的に鍛えられておすすめです。
- プレス系(ショルダープレスなど)の種目を通して高負荷を掛ける
- 主に三角筋前部と中部へ出来る限り大きな負荷を入れて刺激していく
- フロントレイズで三角筋前部を集中的に追い込む
- ラテラルレイズで三角筋中部を集中的に追い込む
- 最後に、リアレイズで三角筋後部を集中的い追い込む
このように、まずは前部と中部の広い範囲を鍛え、その後に各部位を別々に鍛えていくというのが、全体を鍛える際には効果的。
といっても、三角筋全体を鍛えるためには、他の筋肉と比べてより多くの手順と量が必要になってきますが。
三角筋の鍛え方としておすすめなトレーニング方法
さて、三角筋の概要からその特徴までを見てくると、三角筋は上半身の様々な動作に関わっていたり、肉体改造においても重要なパーツであることが分かります。
そのため、この筋肉を筋トレしておくというのは、多くのケースにおいてとても大切。
そんな三角筋の筋トレとしておすすめなトレーニング方法を、4つ紹介していきます。
三角筋のトレーニング① ショルダープレス
ショルダープレスは大きな負荷を扱いやすく、三角筋の前部と中部を同時に鍛えていけるため、三角筋のボリュームを作るために最もおすすめな筋トレ種目の一つ。
このショルダープレスを通して、三角筋のベースを作っていきましょう。
- ダンベル又はバーベルを握ります
- 背筋を伸ばして胸を張り、ウェイトを持ち上げて肩のあたりに構えます
- ひじを伸ばしてウェイトを頭上に持ち上げていきます
- ゆっくりダンベルを下げて元の位置に戻します
- 8回~12回×3セットを目安に行っていきましょう
三角筋のトレーニング② フロントレイズ
フロントレイズは、肩から腕を前方に上げていく肩関節屈曲の動作にダンベルなどの負荷を加え、三角筋の前部を集中的に鍛えていく筋トレ種目。
三角筋前部を追い込むためにも、おすすめな鍛え方です。
- 両手にダンベルかバーベルを持ち軽く膝を曲げて立ちます
- 両手は順手にして、太ももの前側付近にウェイトを揃えて構えましょう
- 両腕を同時に動かしてウェイトを上げていきます
- ウェイトが胸上部の高さに上がるまで、又は腕が床と平行になるまでを目安に上げていきましょう
- ゆっくりとウェイトを最初の状態まで下げて戻していきましょう
- 8~12回×3セットを目安に行います
三角筋のトレーニング③ ラテラルレイズ(サイドレイズ)
ラテラルレイズは、腕を体の側方へ上げていく肩関節外転の動作に、ウェイトの負荷を追加して行う鍛え方。
肩の側面である中部を追い込んで成長させるために、有効なトレーニングです。
- 体の側面で両手にそれぞれダンベルを握って直立します
- ダンベルを握った手のひらは自分の方に向いているようにします
- ゆっくりと肩を軸にしてダンベルを持った腕を横に上げていきます
- 動作の中で、肘は気持ち少しだけ曲げておきます(曲げすぎて肘が手首より低くならないように気をつけてください)
- 肩の高さ(腕が床と平行になるまで)を目安にして上げていきましょう
- ゆっくりと腕を下げていき、スタートのポジションへ戻っていきます
- 8~12回×3セットを目安に行います
三角筋の筋トレ④ リアレイズ
リアレイズは、ほぼ90度に前傾するぐらい上体を倒していき、両腕を横へ上げていくことで、腕が体に対しては水平面で後方に動いていくようになるため、肩関節水平外転を実現できる筋トレ。
肩関節水平外転に関与する、三角筋後部を集中して鍛えていくことになります。
- ダンベルを両手に持って肩幅ぐらいの足幅で立ちます
- 軽く膝を曲げて上体を床と平行になるぐらいまで前傾させます
- 肩甲骨は寄せずに開いておき、肘は軽く曲げておきましょう
- 両腕を開いて側方にダンベルを上げていきます
- この時も肩甲骨は寄せないようにしておきます(寄せるとリバースフライになり、僧帽筋の関与が大きくなる)
- その後、同じ軌道を戻るようにしてゆっくりとダンベルを下ろしていきます
- 8~12回×3セットを目安に行う
三角筋のストレッチ
三角筋の筋トレと一緒にストレッチ方法も知っておき、いつでも三角筋のケアを出来るようにしておきましょう。
三角筋に効果のあるストレッチを2つ紹介しておきます。
三角筋筋のストレッチ① クロスボディ・アームストレッチ
腕を胸の前にクロスさせるように伸ばしていくことで、三角筋の中でも中部と後部をストレッチしていく方法。
- 真っすぐに伸ばした右腕を胸の前に交差させます
- 左腕を立て右前腕にクロスさせ、体に向かって優しく引きます
- 10~20秒そのままの姿勢をキープします
- その後、反対の腕で同じ動作を繰り返します
三角筋筋のストレッチ② ビハインドバック・クラスプ
両腕を腰の方へ回し、後方へ伸ばしていくことで、三角筋の中でも前部をストレッチしていきましょう。
- 手を腰の後ろ側に回し、親指を地面に向けて手のひらを組みます
- 両腕を後方へ伸ばしながら、胸は開いていきます
- 肩甲骨は自然と引き寄せられるようになります
- この体勢を30秒維持して、三角筋前部をストレッチしていきましょう
三角筋とは?【鍛え方・作用・構造まで】筋トレのトレーニング方法からストレッチ方法具体例付き!まとめ
三角筋について、その構造や作用、そして鍛え方を含めた特徴、さらには筋トレにおすすめなトレーニングやストレッチ方法を紹介してきました。
三角筋はとても大切な筋肉。
だからこそ知識を深めて、ケアしていってあげましょう!